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◇福島県を代表する清流伊南川。
伊南のアユとして有名だが、もうひとつの顔を持つ清流でもある。全国のトラウトファンにとって、40cmにも成長するスーパーヤマメの清流として全国に知れ渡っているからだ。
その豊満な魚体に見せられた男が、スーパーヤマメの命名者でもあるヨシ爺こと渡辺良雄だ。
どうしても、遠来の友にその勇姿を見せたい!
しかし、産卵遡上を控えた初秋では、釣りシーズン一番難しい時期でもあるのだ。 |
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チャレンジ初日。
◇ヨシ爺は、ルアーをキャストする前に黙って流れを見つめていた。
渓相と水色から、遡上コースを判読しているのである。永年の感から、クリアな水量を見ただけでその産卵コースが分かるのだと言う。
スーパーヤマメのストップウオーター(着き場)にキャストを繰り返すが、フィールドからの答えは帰ってこない。しかし、是がいつものパターンだと言う。ペアリングを前にした個体は、そう簡単には姿を現してはくれない事は承知の上なのだ。焦る心を押さえながらも、執拗にルアーをキャスト。しかし、収録のタイムリミットは既に越えていた。明日の早朝に、もう一度チャンスがあると心に誓い初チャレンジは幕を閉じた。 |
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チャレンジ二日目の朝。
◇今回は、せせらぎ紀行特番収録の為、釣りロケだけでは無い多忙なスケジュールの中でチャレンジしていた。夜更けまで語り合いながらも、起床はAM5:00。早々と釣り支度をしてキャストポイントに急いだ。タイムリミットはAM:8:00。移動を考えると、約二時間ほどがラストチャンスとなる。
例年なら、南郷地区よりも上流部をベストポイントに設定するのだが、今シースンは水量が多い。昨日の場所に必ず居る。再びノーヒットだった昨日の流域に向った。私に密着しているのは、TVカメラマンとディレクター。そして音声の三人がサポートしている。
どうしても、釣ってやる!! |
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キャンプサイトに戻る途中!
無理やりにチャレンジ!
しかし、追いすらなかった。
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迫る時間とキャストの乱れ。
◇水深約70cm。
玉石が散らばるスーパーヤマメのポイントにルアーを贈り続ける。
6gのスプーンルアーをキャストしてから、手早くベールを返してリーリング(ハンドルを巻く)。次も!次も!無言で繰り返した。どうして姿を見せてくれないんだ。いつも此処を通る筈なのに!おちょくっているんかお前は!一時間はあっという間に過ぎ去り、それよりも早く約束の二時間がとうとうやって来た。
終りましょう。
自分からスタッフに声を掛けた!釣り番組ではないんだからいいんじゃない!
スタッフからの慰めの言葉も、ススキのざわめきの中に空しく消えた。
キャンプ地に戻る途中、車窓からは、いつものヒットポイントが見える。
もう少し時間があったら!...後30分だけやらせて下さい。ディレクターの返事を待たずして、車を急停車して飛び出していた。大雨後でその渓相は荒れていたが、急ぎ中流域からキャスト。絶対にヒットする。その信念を持って、今まで戦ってきたのだ。客人を前にして、ここで負ける訳には行かない。2投。3投!しかし、僅か30分の時間はあっという間に過ぎてしまった。
私の気遣いか、みんな無言だった。寂しいねェ〜手ぶらじゃぁ。〜 |
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楽しい筈の朝食には、
私の姿は無かった。 |
敗者への出迎え。
◇河原のキャンプでは、既に朝食の準備ができていた。
私達釣りロケスタッフをご苦労さん!と皆で迎えてくれた。中本さんと、ガサ入れ隊員にもノーヒットの釣果を作り笑顔で伝える。私だけか、15名のロケ班が一瞬落胆したように思えた。期待されているんだ!
朝食のコーヒーを一口含んでは見たが、自分自身に腹が立っていた。ベストポイントを狙っているのに、何故ヤツは姿を見せないのだろうか。この流れに、必ず居るのは間違いない!これからのロケスケジュールを上の空で聞きながら、食事を切り上げてロッドを握った。
カメラクルーも立ち上がったが、それを静止。15分だけ攻めてきます。
いつも背負っていたカメラザックも脱ぎ捨てて、ランディングネットだけを腰に差し込んで戦場に向った。(この時既に、ベストのネットリリースに掛けるのさえ忘れていたのである。)
後談だが、私の後姿が凄く寂しそうだったと中本さんが言う。でも、私の心は、めらめらと燃えていた。このままで終ったら、今までのアダルトフィッシング(失礼!)が無駄になる。
こうなったら、熟女魚との駆け引きが全てだ! |
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ファイナルチャンスが訪れた。
キャンプサイトから、約70メートル。此処も、ヤマメのコースにマッチする。
だが、テン場の近くだから、いつでもできると決め込んでいたから未だ手を触れてはいない。今は誰も居ない。ルアーキャスターと山女魚との勝負だった。オープンフィールドに数回探りを入れた後、メインスポットに命運を掛けたヨシ爺だった。背後からスタッフの話声!!向こうサイドの 沈石際にルアーをキャストして巻き上げた瞬間!!
ガツンとグリップに衝撃が走った。ヤツは潜んでいた。テールウォークを激しく繰り返しながら、俺の手から離れようとしている。それを宥めすかしながら、スターフに指笛で急を知らせた。 |
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釣りバカのこの笑顔。御覧あれ!
◇リバーエッジに誘い込む。
この時点では、ランディングネットさえも忘れていた。見事な尺上山女魚を皆に見せたかった。ヒットしたのは、この時期には珍しい雄の山女魚だった。千回キャストしても、ヒットすれば一回のキャストで釣ったも同じ気分。釣り人とは、案外そんなもんだ。 |
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ガラス箱を手に突進したのは!
◇異変に気付いたカメラクルーが、玉石が転がるフィールドをフルスピードで駆け寄った。ロッドテンションで宥めながら、尺上山女魚を確保。手巻きのシングルフックなのでバレは無いと思ったが、数分間のカメラスタンバイが一時間にも思えた。 |
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山女魚との遭遇そして別れ!
◇別れは寂しいが、これから種族を残す旅に出る。そっと流れに戻してやりました。
豊かなる南会津、いつまでも永遠なる伊南川の清流よ!
TV画面を使用していますので、画面の荒れは御容赦ください。 |
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